2020年4月3日金曜日

敏腕ファンドマネージャー7 北原淳平

1月16日の日経ヴェリタスに、「19年夏に日興アセットマネジメントに移った北原淳平氏が8月から担う日本株のアクティブ投信は、12月末までの同種のファンドのなかでトップの運用成績をあげた」とあった。北原氏について少し調べてみると2018年に国内投信で唯一のプラスリターンをあげた「オーナーズ株式オープン」の元ファンドマネージャーであることがわかった。興味が湧いたので調べてみた。

■運用成績
・東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン。2013年4月の開設から2019年7月まで運用。プラスリターンは300%超。運用年度でのマイナスリターンは一度もなし。

・日興アセット・ミュータント。2019年8月から運用。運用成績は「同種のファンドのなかでトップ」。

■経歴など
元鉄鋼業界アナリスト。(コメント抜粋・編集)「アナリスト時代は目標株価をはじき出すために膨大な時間をかけて業績予想モデルを構築していたが、いくら業績を正しく予想しても株価の動きまでは読み切れなかった。マクロ経済モデルにまで手を広げてみても結果は同じだった。次第に数字の予想はいずれコンピューターのほうがうまくできるようになるだろうと考えるようになり、人にしかできない付加価値を追求するようになった。

経営者に話を聞いていくと、オーナー経営者は「会社が社会に必用とされているかどうか」をより深く考えており、強いリーダーシップによって業績が着実に伸びていることがわかった。所有と経営が分離しないオーナー企業の業績がよいとの論文は世界で多く見られており、オーナー企業で組成した仮ファンドのバックテストの結果も良好だったことから、「オーナーズ株式オープン」を開設した。」

■オーナー企業の強みと弱み
<強み>
・オーナー経営者は株主と利害関係が一致するので”最強”のガバナンス体制が構築されやすい。
・株主視点の経営をするので成長資金が集まりやすい。
・オーナー経営者は在任期間が長く、業績不振でもすぐにやめることができないので長期目線の経営をする。事業環境が厳しいときでも設備投資をあまり減らさない傾向があり、業績が一時的に落ち込んでもリカバリーする力が強い。
・意思決定が早い。サラリーマン経営者は自分の任期中に事業が失敗しても問題を先送りする傾向があるが、オーナー経営者は結局自らが責任をとらなければならないため先送りしない。オーナー経営者は肝いりで始めたことでも失敗したと思ったらすぐに手のひらを返すことができる。
・リスクをとってチャレンジする傾向が強く、新規事業にも積極的に取り組む。
・利益率の高いビジネスを手がける傾向がある。

<弱み>
・事業継承リスクがある。オーナー企業の強みはオーナーの経営力になるが、その経営者がなんらかの理由で会社を抜けた場合は会社が傾く恐れがある。
・ワンマン経営になることがある。経営者の独断に陥るとガバナンスが効かなくな恐れがある。
・刻々と思考が変化するオーナー経営者も多いが、そういう場合はスピード感を持って仕事をする優秀な社員ほどしっぺ返しを食らいやすい。このような状況になると社員が自ら事業を牽引する力が弱まり、指示待ち人間が増えやすくなる。
・親族間でトラブルが起こることがある。
・一族経営の場合、一族以外の人間は社長になれないため、優秀な人材が入ってきにくい。
・会社を私物化するオーナーもいる。

■運用手法:オーナー企業投資法
投資する企業はオーナー企業のみで、銘柄は次の3段階で絞り込んでいく。

まずは経営者の持ち株比率が5%以上の銘柄を抽出する。その基準に該当する銘柄は全上場企業約3700社のうち約1000社になる。次にこの中から極端に流動性の低い銘柄を除いた上で、オーナー経営者と面談して約100社まで絞り込む。最後に利益の見通しやフェアバリューとの乖離率などを踏まえて約30社まで絞り込む。投資する会社の規模や業種に制約はないが、結果的には創業年数の浅い内需小型株が投資対象になることが多い。

経営者と面談する際には「長期ビジョンは明確か」「社会の役に立とうと考えているか」「経営戦略について経営者自ら合理的に説明できるか」「事業戦略が独断になっていないか」といった点に注目する。その上で経営者の戦略が理解できるか、経営者を信じられるかを判断の最重要ポイントとする。原則として経営者と会えない企業には投資しない。投資をした後も3~6ヶ月に1回は経営者と面談する。

中長期的な企業の成長力に注目しているので銘柄の入れ替えは月に0~2件程度になる。短期的な相場動向を気にして銘柄を入れ換えることはない。

市場平均指数や貿易摩擦などのマクロ環境はあまり気にしない。外部環境の変化を当てるのはそもそも難しく、その変化に対応できる経営者を選別することに力を注いだほうがリターンが上がりやすい。素晴らしい経営者は逆風下でも増益を確保したり、たとえ業績が一時的に悪化しても素早い経営判断で立て直すことができる。
*「ミュータント」ファンドでは、ポートフォリオの約2割をマクロ要因銘柄で構成している。

ポートフォリオの変動率を下げるためウェイト調整は適宜行う。株価が上昇して割高感が出た銘柄は売却し、割安感のある銘柄に入れ換えるなどして、毎年プラスを出すことを重視する。中小型株への投資比率が高いファンドでは、割高な銘柄を購入し、その後相場が下落してパフォーマンスが悪化し、それを受けてファンドの解約注文が増えるという悪循環に陥りやすい。

経営者との面談で経営者の発言がブレたり、経営ビジョンがズレ始めたと感じた場合も売却する。

「短期的に大きなリターンをあげることより、長期にわたって安定したリターンを出す」「オーナー企業こそがリスクをとって新たな事業を進めることができる。リスクをとって成長するオーナー企業を長期にわたって応援する」というのが基本的な運用方針になる。

参考:(グーグル検索と日経検索で「北原淳平」でヒットした記事)

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