2020年4月3日金曜日

売買チェック 1月 フェローテック

■買い
・フェローテック
半導体関連の出遅れ銘柄。1月8日付の大スポ記事がきっかけ。株式評論家の北浜流一郎氏は毎年、証券関係者仲間を集めて忘年会を開くようだが、そこで各人の翌年一押し銘柄をあげてもらうという。その忘年会で2年連続トップになった雨宮栄子氏(京子氏?)が挙げていたのがこの銘柄。雨宮氏は去年、弁護士ドットコムを挙げていていたのでなにか通じるものを感じていたが、日経でフェローテックを調べてみると11/8の日経でフェローテックIRが「業績は今期が大底になる」と言っていたのでよさそうだと思った。チャート的にも「セットアップ」が完了しているように見えた。

<1月9日時点での1年チャート> 底値を切り上げながら移動平均線が収斂している。

<1月9日時点での5年チャート> 累積売買高的には「底」で、中期の移動平均線でもゴールデンクロスを形成しそう。ただし、赤い線(1500円)あたりが「天井」になりそう。

<1月9日時点での5年チャート> 一目均衡表では雲が薄くなりつつある。


フェローテックについて調べてみた。

■どんな会社か
半導体関連製品などを製造・販売する会社。半導体分野のニッチ領域に強く、真空シールやサーモモジュールは世界シェアトップ。売上の8割は海外になる。

今期の予想売上高は850億円で、その内訳は大きい順に
・その他(産業用刃物、組み立て受託など)172億円
・石英製品 160億円
・サーモモジュール 126億円
・セラミックス 88億円
・半導体ウエハー 81億円
・真空シール 80億円
・洗浄事業 64億円
・EBガン・LED蒸着装置 38億円
・CDV-SIC(炭化ケイ素) 21億円
・石英るつぼ 11億円
・磁性流体 7億円
になる。営業利益率は例年10%程度だが、今期は売掛金の未回収や為替差損により7%程度まで低下する。

■成長ストーリー
「デジタル革命と『中国製造2025』の波に乗って業績拡大」が基本シナリオ。

今は世界中でデジタル革命が起きているので、今後長期で半導体製品の需要拡大が見込める。また中国では国策『中国製造2025』で半導体の内製化率を現在の15%から2025年に70%まで高める目標を掲げている。中国に「本拠地」を置くフェローテックはこれらの需要を的確に捉えていくことを基本戦略としている。

フェローテックは2017~2019年に1000億円程度の設備投資をしているが、その大半は中国の工場向けになる。中でも最も投資をしているのが半導体ウエハー製造工場向けで、中国の半導体ウエハー市場でトップシェアをとることを目指している。

次に力を入れているのが半導体洗浄事業で、中国ではすでに6割のシェアを抑えており、今後は市場の拡大に合わせて成長させていくという。

5G関連で成長しているのがサーモモジュール事業になる。現在、中国製の5G通信機器で使われているサーモモジュールの9割はフェローテック製になるが、この需要は2023年までに現在の4倍まで拡大する見込みという。
*サーモモジュールとは対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子で、自動車の温調シート、通信機器、医療機器、家電などに使われる。

投資フェーズのピークは過ぎたが、今後も年間100~200億円の投資は続けていくという。投資先は半導体ウエハーの再生工場や半導体開発・分析センターなどで、投資資金は自己資金に加えて、中国政府からの補助金、株式市場からの調達などを考えているという。

今期の会社の売上高予想は850億円で、来期が1100億円、再来期が1250億円になる。現在の生産能力の売上高ポテンシャルは1600~2000億円くらいあるという。

■問題点
・半導体ウエハーが供給過剰になりそう
フェローテックは「ムーアの法則が限界を迎えつつある」として供給過剰懸念を否定しているが、フェローテックが製造する半導体ウエハーは参入障壁の低いレガシー半導体になる。中国では政府のバックアップなどにより(レガシー)半導体ウエハー工場の建設ラッシュが続いているが、政府の需要見通しは往々にして外れるので、今後は鉄鋼業界で起きているような供給過剰に陥っていく可能性がある。中国政府はかつて鉄鋼産業を全面的にバックアップしていたが、その後供給過剰に陥り、現在でもそれは解消されていない。中国の鉄鋼業界ではゾンビ企業が続出しており、その余波は中国国外の鉄鋼業界にまで及んでいる。フェローテックもゆくゆくはゾンビ企業になる可能性がある。
*ムーアの法則とは半導体の性能が2年で2倍になるという法則
*レガシー半導体とは先端品より3世代前の半導体で、家電や顔認識チップ、パワー半導体などに使われる。
*パワー半導体とは電力制御を行う半導体で、主にモーターの駆動や家電、自動車の電力制御などに使われる。フラッシュメモリーやDRAMなどのメモリー系半導体と違ってオーダーメイド品が多いため、価格が比較的安定しやすいという特徴がある。
*ゾンビ企業とは利払い費が利益を上回る企業。

・賀副社長を止める人がいない
フェローテックはブルーオーシャン戦略(ニッチトップ戦略)からレッドオーシャン戦略(競争激化戦略)に転換しつつあるが、この戦略を主導するのがフェローテックの実質的な経営者である賀副社長になる。レッドオーシャン戦略は破滅に向かいやすい戦略なので改めたほうがよさそうだが、賀副社長を止められそうな人物が見当たらない。社長はすでに人生の回想モードに入っているようだし、社長の息子のもう1人の副社長はパワー不足でとてもエネルギッシュな賀副社長を止められそうにない。

賀副社長には半導体ウエハー事業を単体で上場させる計画もあるようだが、他の優良事業を守るためにも、ウエハー事業は賀副社長とセットで、本体から切り離した方がよいのかもしれない。

・財務状態が悪い
フェローテックは積極投資により自己資本比率が26%まで低下しており、流動比率も危険な水準に達しつつある。賀副社長は「営業キャッシュフローの水準から借入金の返済は心配ない」と語っているが、ちょっとしたアクシデントで一気に資金繰りが苦しくなる恐れがある。現在、中国ではデフォルトが増え始めており、フェローテックでも第2四半期に中国で5億円のデフォルト(売掛金の未回収)が発生している。中国の景気はすでにピークアウトしているので、フェローテックは今後「デフォルトショック」に見舞われる可能性がある。
*足下では「新型肺炎の流行」というただならぬアクシデントが生じている。
*フェローテックは2月に無担保新株予約権付社債で37億円の資金調達をしているので多少の余裕はできたのかもしれない。

・中国で工場建設費未払いの訴訟を起こされている
2019年11月に竣工した中国の工場で建設費未払いの訴訟を起こされている。建設会社側は図面の提供遅延や度重なる行程変更により追加費用が発生したと主張しているが、フェローテック側は建設会社が事前の承認なしに追加工事をし、当初の工事代金を大幅に超過したとして支払いを保留している。フェローテックは工場の竣工を急いでいる中で追加工事の要請しているわけだが、そこで着工を承認してないという主張にはやや無理を感じる。今は中国政府が指定した第三者機関が鑑定を進めているところだが、結局はフェローテック側が支払うことになりそう。なお、追加費用の総額は約60億円になる。

・賀副社長の予測精度が低い
賀副社長は2017年に「来期の売上高は1000億を突破する」と語っているが、その後業績が下振れし、現在においても1000億円は突破してない。来期以降はさすがに突破しそうだが、賀副社長の予想はあまりあてになりそうにない。上記投資案件も賀副社長の想定通りにいかない可能性が高い。

・為替差損が起こりそう
フェローテックの海外売上高比率は8割と高いので、円高になると為替差損が発生する。今後は世界景気減速とともに円高傾向が強まっていきそうなので、業績が下ブレやすくなりそう。人民元が1元安くなるとフェローテックには3億円の為替差損が発生するという。

・新工場の立ち上げがうまくいくのか疑問
この2年間に中国で8つの工場を立ち上げているが、権限はすべて各工場に委譲し、純利益だけで評価していくという。新工場の立ち上げはこんな数字だけの管理でうまくいくのか疑問。

・信用買い残が多く、上値が重そう。

■まとめ
フェローテックは真空シールでグローバル・ニッチトップということは知っていたので良さそうだと思ったが、調べてみるとニッチトップとは真逆の方向に進んでいることがわかった。厳しそうなので撤退の方向で行く。


『ミネルヴィニの成長株投資法』には「出遅れ株には手を出すな」とあり、「出遅れ株は先導株より割安に見えるが、売上高と利益の伸びで劣っているので実際は「割高」になる。出遅れ株には出遅れる理由が必ずあり、またたとえ上がりだしたとしても先導株ほど上がることはめったにない。そして上がりだしたときが相場の終盤にさしかかっている警告になる」とあるが、それも一理あると思うので、今後は出遅れ株には手を出さないようにする。

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■売り
・フェローテック 全売却 損益-9%。
損切りラインに達したから。シリコンサイクル的には盛り返す可能性もまだありそうだが、長期では厳しいと思った。

・・「よく調べないで買った株は失敗することが多い」とブログに書いているにもかかわらず、またやってしまった(笑)。買った直後に新株予約権付社債を発行するIRがあり、フェローテックの「本拠地」中国で新型肺炎が発生したのはツイてないとは思ったが、それ以上によく調べないで買ったのがまずかったと思う。今後は同じ過ちを繰り返さないようにしたい。

ただ今回は大きく買っていたわけではなかったので、損失もそれほど大きくはならなかった。それに買ったからよく調べたわけで、このパターンもそれほど悪くないかなとも思った。

参考までに現在のフェローテックのチャートも載せておく。
<5年チャート> チャートは底割れ。これまでの「底」が「天井」になりそう。

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